相談例・解決例
2022年07月05日更新 欠陥住宅コラム
熊本地震における欠陥住宅の調査
1 熊本地震の発生
2016年4月14日に熊本地震が発生してから、丸6年がたちました。
熊本地震により被災された方々に、改めまして、心よりお見舞い申し上げます。
2 家屋の損壊原因
熊本地震では、多くの家屋が倒壊しました。
家屋が損壊した原因は、地震の大きな揺れを受けたことにあるのと考えるのが通常です。
しかし、なかには、当該家屋にそもそも欠陥があったため、地震の影響を受けて破損や倒壊に至った可能性があります。
欠陥住宅福岡ネットは、有志の弁護士・建築士が九州の欠陥住宅問題に取り組む団体です。
熊本地震発生後、欠陥住宅福岡ネットでは、相談を受けた住宅を対象に、現地にて調査を行いました。
設計ミスや手抜き工事が原因で住宅の損壊に至っている場合、業者の責任追及を行うことになりますが、そのためには、倒壊家屋の片づけや撤去がなされる前に、証拠保全等を行う必要があります。
欠陥住宅福岡ネットの現地調査は、住宅に欠陥がある可能性があるかを建築士が確認し、法的責任追及のためのアドバイスを弁護士が行うことを目的に行われました。
3 調査内容
2016年5月8日、建築士と弁護士による5つのチームが熊本に入り、各チームそれぞれ2件~4件の家屋の調査を担当しました。
構造上の欠陥がある可能性が指摘された事例のうちのいくつかを紹介します。
⑴事例1
崖上の住宅地に立つ住宅があり、崖側の擁壁が大きく崩れており、擁壁側に向けて家が全体的に傾いているという住宅。
擁壁やコンクリートブロックの状況を確認し、敷地内を目視にて確認したところ、地面と基礎の間にすきまがあり、床を計測したところ、1000分の14~15度程度の傾きがあることが確認されました(実際に中にいると、短時間の滞在でもめまいがするようなフラフラする感覚がありました)。
建築士からは、この崖地に作られた擁壁が、土圧を十分に受け止められるような構造ではなかった可能性が指摘され、擁壁工事に問題があった可能性が指摘されました。
⑵ 事例2
建築されて4年もたっていないまだ新しい住宅が、内部で壁が大きく破損しているという家屋。
建物の揺れ幅が大きかったのか、柱と壁をつなぐ釘が多く浮き上がっていました。
設計図書と照らし合わせて確認したところ、設計上は耐力壁や柱であるはずの箇所が、そのようには施工されていない可能性がありました。
この住宅については、設計・施工上の欠陥がある可能性はあったものの、住宅瑕疵担保責任保険に加入しており、保証期間内にあったため、これを利用するよう助言を行いました。
⑶ 事例3
本来ならば建築物の構造を補強するはずの筋交いが切断されていた家屋。
地震で筋交いが破損したのではなく、電動ノコギリのようなもので切断した跡があり、家が傾いていました。
施工に問題がある可能性が高い事例でした。
しかしながら、損壊住宅の所在地が地震の震源地に非常に近いため、施工に問題があったとしても、住宅の欠陥性と損壊の因果関係が立証できないのではないかとの問題点が指摘されました。
4 欠陥住宅
住宅建築は専門性が高く、たとえ欠陥住宅であったとしても、このように、天災や事故等が起きない限り、なかなかその欠陥に気づくことは難しいのが現状です。
事故や、地震等の天災により、住宅が倒壊した場合、すぐに片づけをしてしまう前に、調査をした方がいい場合がありますので、お気軽に当ホームページ内の相談窓口までご相談ください。